テキスタイルデザイナー福田貴久子氏に聞く『THE “KYOTO” MEISTER COLLECTION』開発ストーリーと活用術 【TECTURE MAG掲載】
『THE KYOTO MEISTER COLLECTION』は、建築・空間ビジネスにおける新たな経験価値を創造する活動に対して、建築デザイナーやアートディレクターの創造性を刺激し、多様なインスピレーションを生み出す事につながる、新規性と独自性の高い素材、その背景となるイメージ、ストーリーなどを提供します。 本紙を構成する京都の匠たちは、今日まで、各時代における技術革新の蓄積を継承・発展させることで、世界有数の高級染織産地としての地位を確立してきました。
その背景には、千年以上の歴史に根ざした京都の伝統文化と、そこで育まれた独自の美意識や価値観があります。
生産性が重視され、工業化、量産化された画一的な製品があふれる現在、特別な技術や匠の手仕事、その仕事を生み出す工房システムや諸道具によって創造される世界中を探してもどこにもない伝統的価値を様々な国々の建築・空間産業と世界の人々へ伝えます。
西陣織とは、多品種少量生産が特徴の京都(西陣)で生産される先染めの紋織物の総称で、国の伝統的工芸品に指定されています。
京の絹織物は湿潤な盆地の環境と、繊細な手仕事から生み出され、平安朝以来、連綿と積み重ねられてきた高い技術の蓄積に支えられ、綾・錦・羅・紗・絽・金襴・織紬・絣など多彩な技法の織物の生産と、優れたデザインによる創作力・表現力を磨くことにより、今日の高い評価を得てきました。現在、西陣織工業組合により「西陣織」のブランドの管理やクオリティーの維持が行われています。
京友禅とは、京都を代表する染色技法で、国の伝統的工芸品に指定されています。
友禅染は、糊置防染による多色模様染め技法で、豊かな色彩と絵画的表現の多彩さが特徴です。
本友禅(手描き友禅)は、下絵に糊筒で糸目糊を置き、地入れ、色挿し、蒸し、伏せ糊、地色引染、定着後に水洗いして糊を落とし、さらに摺箔や刺繍など様々な加工を経て完成させますが、工程は分業化され、それぞれに特別な技術を持った職人(技術者)が関わります。現代では、簡略化された手法が用いられますが、京の雅な文化が京友禅の華やかさを生み育ててきたともいえます。
丹後織物とは、国内最大の絹織物産地である京都府・丹後地方で生産される織物の総称です。
特に、丹後織物を代表する丹後ちりめんは、経糸に無撚の生糸を使用し、緯糸には強い撚りをかけた糸を用いて、左右に強撚糸を一本あるいは二本交互に打ち込んで織り上げた後、精練によって生地面に「シボ」と呼ばれる凹凸を生じさせた絹織物を指します。
天然繊維が主な素材でしたが、化学繊維の開発により、今日ではさまざまな繊維素材が用いられ、着尺や羽尺などのきもの用、帯地や襟地などにとどまらず、極めて広い範囲の生地素材として使用されています。
2022年3月1日発行
2023年3月1日発行